深呼吸で生活習慣病予防(高血圧)
深呼吸は、副交感神経の働きを高めるばかりか、高血圧を改善し、動脈硬化や血栓を予防して生活習慣病の予防にもつながることもわかっています。これは、呼吸をしたときに、肺から出る「プロスタグランディンI2(アイツー)」という物質による作用です。
「プロスタグランディンI2」は医薬品にも使われている物質で、血管を拡張させて血圧を下げたり、血管を収縮させるホルモンの分泌を抑制する働きがあります。また、動脈壁にコレステロールなどの血中脂質がしみ込むのを防いで動脈硬化を予防したり、血栓ができるのを防ぐ作用があります。
深呼吸をしたときには、ほかに「プロスタグランディンE」という物質も出て、これも高い血圧降下作用を発揮します。
プロスタグランディンI2やEの作用を十分に発揮させるには、肺全体を使った呼吸が理想的です。なぜなら、これらの物質は、肺を構成している肺胞(はいほう)というたくさんの小さな袋が大きくふくらんだとき、肺胞をとり巻く毛細血管の壁でつくられるからです。したがって、肺全体を使った呼吸をして肺胞を大きくふくらませるほど、これらの物質が多く分泌され、その働きも期待できるわけです。
しかし、実際に肺全体を使って呼吸をしている人は少なく、たいていの人は肺の呼吸機能の70~80%しか使っていません。肺という臓器が縦に30~40cmと長く、下のほうは血液の重みによって肺胞がつぶれがちなことや、デスクワークなどで背を丸めた姿勢を続けるために肺の上部も圧迫されていることが原因です。
こうしてつぶれがちな肺胞を広げ、呼吸機能を十分に使うには、腹式呼吸は、肺の中心部から下のほうまで十分に広げる呼吸、胸式呼吸は肺の中心部から上のほうまで十分に広げる呼吸です。 ヨガで行う完全呼吸法は、この双方をカバーしてくれる理想的な呼吸法といえます。