メディカルヨガ

メディカルヨガ

介護現場で働く方のためのヨガ

介護福祉の仕事をしている方のために書き下ろした連載ですが、介護疲れによる社会問題が最近とても多くなっているため、前倒しでご紹介させていただくことにしました。

福祉、介護に携わっている方も、そうでない方もよろしければ読んでいただければと思います。

心と身体が疲れたら 
初めまして、病院でヨガのクラスを担当していますLuna2と申します。
病院で働く多くの方々が心と身体のバランスを崩し、体調不良に陥っています。
「現場で働く方々の心と身体のケアから医療は始まっている」ということに気づいた病院が、ヨガのクラスをスタッフの方々に提供しようというところから私のクラスは始まりました。

ヨガが身体にいいらしい。ヨガがストレスにいいらしい。ということはよく耳にされるかと思います。巷ではようやく日本でもその効能にひかれ、ヨガ・スタジオやスポーツクラブに通う人も増えてきました。 

でも、私はこう思います。ヨガがもし人の役に立つのであれば、それは自分でヨガを始められるような人たちではない。なんだか心も身体も不調だ。ヨガを始めたいと思っても、なんだか神秘的で怖い。身体が硬くて自分にはできそうにない。仕事が不規則で、スポーツジムになんて通えない。自分の心と身体のケアなんてしている余裕がない。
一生懸命、人のため、家族のために働いている方々がケアされる環境が残念ながら今の日本には整っていません。そのために、心と身体のバランスを崩し、不調を訴えながら毎日の仕事に取り組まれている方々こそ、もっと楽になってほしい。と思います。 
テレビのCMで見るような、頭が脚に乗っかったようなポーズのお話はいたしません。
心と身体が楽になるちょっとしたお話と、ポーズを毎回ご紹介していきたいと思いますので、どうか仕事の手を休め、気楽におつきあいいただければと思います。

前回は一日一回の前屈でデトックス、というお話をしましたが、もう一つ前屈の意外な効用についてお話ししたいと思います。
普段私たちは立っているとき、座っているとき、そして歩くとき、いつでも上体は直立した状態を保っているため、視点は前に置かれ、目は前方にある世界と共に、目や首を上下左右に動かしたときに見えるであろう視界に向けられています。 前屈をしてみると直立のときに比べ、頭の可動域が大幅に制限されることがわかると思います。
これが何を意味するかと言うと、視野が狭くなる分、視覚的な対象物を目で追うことが困難になります。それゆえ、自然と私たちの視線はある一定範囲内に定まります。 そしてもちろんのこと、見える世界が逆転します。

心が疲れたとき、だまされたと思って前屈をしてみませんか。同じ世界も、違う姿勢から覗いてみると違って見えてくる、というところに何かヒントがあるかもしれません。
開脚をした前屈 足を軽く膝を曲げれる程度に開いて立ちます。足同士は平行に並べます。 膝を軽く曲げ、背筋を伸ばしてみます。そして、腰に手をあて、股関節から蝶つがいのように曲げてみましょう。これ以上曲がらない、というところにきたら、腕はだらりと降ろし、上半身の力を抜いてみます。先ほど、視界が定まると言いましたが、あえて首を軽く前後左右に振ってみてもいいでしょう。 起き上がるときは、腰に手を当てて、さっきと逆です。膝を軽く曲げ、股関節を蝶つがいのように使い戻ってきます。急に戻ると、クラクラしますので注意してくださいね。

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最近では任侠ヘルパーや救命医療のドラマも人気が高く、現場で働く方々の大変さを私たちもかいま見させていただく事ができるようになりました。それにしても現実はドラマの裏に隠れた部分も多く、きれいごとではすまされない事に拳を握り、涙をのみ、笑顔を作り頑張っている方々がたくさんいます。

「ヨガを始めると新しい自分と出会えるよ!」なんてキャッチコピーを目にしても「こんな不規則な勤務形態で、家に帰ればバタンキューなのに、腰も肩も痛いのに」という方がほとんどなのではと思います。「通勤帰りにヨガを始めてみようかな」「友人に勧められてやってみた」なんて人は、実はとても運がいいのです。

ヨガと聞いて多くの人が連想するヨガポーズの類いは実はヨガの要素のごく一部でしかありません。ヨガの練習には呼吸だけのもの、瞑想だけのものもあるように、息ができる人なら意外と簡単なところから始められるものなのです。確かにヨガは深いものです。勉強をしても一生かかってもおそらく理解しきれないところもあるはずです。でもその人間・自然観察の集大成は数千年の時を経て後生に語り継がれ今やその心身への効能ゆえ世界的に普及が始まっています。

大衆文化として伝わってきたということはそれだけごく一般市民が日常続けられる要素を含んでいたという事です。もちろんインドと日本では生活の仕方も環境も異なりますが、インドの人全てがヨガ修行者ではないはずです。毎日の生活にヨガという文化を取り入れて暮らしている人々が大半なのではないでしょうか。
日本人は子供の頃からガネーシャとかカルマとかいわゆるインドの神様や思想になじんで育ってきているわけではありませんから、そこまで文化としてヨガが浸透する土壌を有しているとは思いません。一方、ヨガの世界的な普及の背景として、ヨガの根底に流れるものの見方・考え方、平和な世界観、それを反映した呼吸法、生活観、操体法などが現代人の健康問題の解決に役立ってきています。

コラムではヨガの深いところまで解説できるわけではありませんが、疲れたときに活かせるヨガのヒントを綴っていきたいと思います。あっけないほど簡単なものもあるかもしれません。それでも、ヨガ教室に通わなくても安全かつ簡単にできることはまだまだ沢山あります。

極める事だけが道ではありません。歩く方が楽になればそれも道なのではないかと思います。

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SMS co.Ltd. 殿のご協力により、心と身体のストレス対策ならびに腰痛や肩こりと言った職業病対策のコラムを書き始めました。
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忙しくてヨガ教室に通う時間がない方でも、ヨガと出会うきっかけがありますように。
そして、自分のことよりお世話する方のことを優先するあまり、気力も体力も限界にきてしまっている方が、少しでも自分のために時間を割いてあげるきっかけになりますように。
だまされたと思って身体を伸ばしたり開いたりしてみたら、なんだか気持ちが晴れ晴れした、という魔法にかかってもらえますように。

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