介護者の鬱へのキルタンによる癒し
アメリカでも、介護の問題は深刻さを深め、ストレス、心身の病気、薬の多用などがみられます。しかし、2004年から、介護者のストレス軽減モデルの構築のパイロットスタディが始まっていることには驚きます。家族へのコンサルテーション、社会的なサポート、コミュニケーション、心理トレーニング、スキルアップ実習、セルフケア実習などです。
キルタン・クリヤというヨガの手法を一日12分、8週間行ってみる、という研究がありました。キルタンとはインド古代の歌で、具体的には、Saa Taa Naa Maa(サ タ ナ マ)をリズムに乗せて唱えます。英語ではBirth, Life, Death, Rebirth という概念となります。それぞれのシンボルに指の動きをつけることによって、対象にフォーカスしていきます。指示が出たら唱え言葉を小さくしていき、声を出さずに心の中で言葉を唱え、最終的には指の動きだけでビジュアリゼーションを行っていきます。
研究では、介護者の介護する相手のステージや、本人の気質、それに心身のパラメータ、例えば心理的なこと、ストレスホルモンの分泌が、鬱やストレス耐性にどういう影響を与えるかが着目されました。
キルタンとリラクゼーションはどちらもストレスを下げることがわかりました。ストレス耐性は、圧倒的にメディテーションの方が高く、認知力はリラクゼーションでは下がり、メディテーションの方が高まっているという結果でした。ストレスに関係するNFkBや、テロメラーゼや脳の部位の活性化などについても調べられています。
キルタンクリヤはたとえばクリスチャンのところでは「キリスト、ハレルヤ・・・」と唱えていったり、Past, Now, Future と言いかえたりすることもあるそうです。日本人には何がしっくりくるでしょうか。
興味深かったのは「私は自分のために20分の時間を避けるか」という新しいコンセプトの提示です。日本の介護の現場でも、直接的なキルタンの導入とはいわないまでも、ストレス低減プログラムが浸透していってほしいと思います。